世界で最も多くのファンを持つクラブの一つ、マンチェスター・ユナイテッド。その輝かしい歴史は、いつの時代もスター選手たちの活躍と共にありました。特に、絶対的指揮官サー・アレックス・ファーガソンが退任して以降、クラブはかつての栄光を取り戻すべく、移籍市場で莫大な資金を投じてきました。
その額は時に天文学的数字となり、期待と共に大きなプレッシャーを選手に与えます。サポーターの熱狂的な支持を一身に受けてオールド・トラッフォードに降り立った者、鳴り物入りで加入しながらも期待を裏切った者、その運命は様々です。
今回は、そんなマンチェスター・ユナイテッドがこれまで支払ってきた移籍金トップ10の選手たちをランキング形式でご紹介します。果たして、その巨額の投資は成功だったのか、それとも失敗だったのか。彼らがクラブに残したものを、冷静かつ徹底的に分析していきましょう。未来の移籍が噂される選手たちも含まれており、クラブの未来を占う上でも必見の内容です。
サー・アレックス・ファーガソン監督がその才能に惚れ込み、マンチェスター・ユナイテッドに加入した「日本の至宝」香川真司。ドルトムントでの圧倒的な活躍を引っ提げてのプレミアリーグ挑戦は、多くの日本人ファンの期待を一身に背負うものでした。加入初年度にはアジア人選手として初となるプレミアリーグでのハットトリックを達成し、リーグ優勝に貢献するなど、その才能の片鱗を確かに見せつけました。
しかし、ファーガソン監督の退任後、彼の運命は暗転します。後任のモイーズ、ファン・ハール監督の戦術にフィットせず、本来のトップ下のポジションでプレーする機会は激減。不慣れなサイドでの起用が続き、徐々に輝きを失っていきました。彼のマンチェスターでの挑戦は、監督交代という大きな波に翻弄された、才能ある選手にとっての悲劇として多くのファンの記憶に残っています。
ウルヴァーハンプトンでその才能を開花させた、ブラジル人らしいテクニックと創造性を持つアタッカーが25/26シーズンから赤い悪魔の一員となります。最前線からトップ下までこなせる器用さを持ち、独創的なプレーでチャンスを創出する能力に長けています。彼の加入は、攻撃陣に予測不可能な要素を加えることになるでしょう。
ウルブスではチームの攻撃を一人で牽引するほどの存在感を示しており、より質の高いチームメイトとプレーすることで、その能力がさらに引き出されると期待されています。ブルーノ・フェルナンデスに次ぐ新たな司令塔としても、また点取り屋としても機能できる彼の存在は、チームの戦術に大きな幅をもたらすはずです。
25/26シーズンからの加入が内定している、ブレントフォードでプレミアリーグ屈指のウィンガーへと成長したカメルーン代表。スピードに乗ったドリブル突破と、中央へ切り込んでからの強烈なシュートが持ち味で、得点力とアシスト能力の両方を兼ね備えています。前線ならどこでもプレーできるポリバレント性も、監督にとっては大きな魅力となるでしょう。
すでにプレミアリーグで実績を残しているため、リーグへの適応に不安がない点は大きなプラス材料です。アントニーやサンチョの不振で課題となっているウィングのポジションで、即戦力としての活躍が期待されます。彼の加入は、マンチェスター・ユナイテッドの攻撃に新たな次元をもたらす可能性を秘めています。
レアル・マドリードでチャンピオンズリーグ優勝の立役者となり、当時の英国史上最高額で加入したアルゼンチンのスター選手。伝説の背番号「7」を託され、そのドリブルとパスで攻撃を牽引することが期待されました。デビュー当初は素晴らしいプレーを見せ、その期待に応えるかのように思われました。
しかし、イングランドのサッカーと生活に馴染めず、自宅に強盗が入る事件も重なり、急速にパフォーマンスが低下。ファン・ハール監督との戦術的な不一致もあり、わずか1年でPSGへと去っていきました。ユナイテッド史上、最も期待を裏切った「ビッグネーム」の一人として、不名誉な形で記憶されています。
25/26シーズンからの加入が決定した、RBライプツィヒで評価を高めるスロベニア代表の若き大型ストライカー。195cmの長身ながらスピードと足元の技術を兼ね備え、現代のFWに求められる要素をすべて持っていると高く評価されています。彼の存在は、ホイルンドと共に若く強力な2トップを形成する可能性を秘めており、ファンにとっては夢が膨らむ補強です。
プレミアリーグの激しいフィジカルコンタクトへの適応が最初の課題となりますが、ザルツブルク、ライプツィヒとレッドブル系列で着実にステップアップしてきた実績は本物です。マンチェスター・ユナイテッドの長年の課題である得点力不足を解消する救世主となれるか、そのパフォーマンスに大きな期待が寄せられています。
アタランタでの活躍により「ネクスト・ハーランド」として注目を集め、若きストライカーを探していたユナイテッドが巨額を投じて獲得したデンマークの逸材。その若さ、スピード、そしてゴールへの貪欲な姿勢は、多くのファンに未来のエースとしての期待を抱かせています。加入初年度はチャンピオンズリーグで得点を量産し、そのポテンシャルの高さを証明しました。
一方で、プレミアリーグでの得点ペースは波があり、チーム全体の攻撃が停滞する中で孤立する場面も多く見られました。しかし、彼の持つポテンシャルは疑いようがなく、まだ20代前半であることを考えれば、今後の成長次第でこの移籍金の価値を証明する可能性は十分にあります。ファンは彼の覚醒を辛抱強く待っています。
エヴァートンで圧倒的な得点力を見せつけ、鳴り物入りで加入したベルギー代表の怪物ストライカー。その屈強なフィジカルとゴールへの嗅覚は、ズラタン・イブラヒモビッチ退団後のエースとして十分な期待を抱かせるものでした。実際に多くのゴールを記録し、数字の上では決して悪い成績ではありませんでした。
しかし、彼のプレースタイル、特にボールタッチの粗さがチームの戦術にフィットしないという批判が絶えませんでした。サポーターからの信頼を完全に勝ち取ることはできず、わずか2シーズンでインテル・ミラノへ移籍。イタリアで完全復活を遂げた姿は、ユナイテッドが彼を活かしきれなかったことを証明する結果となりました。
ボルシア・ドルトムントで驚異的な成績を残し、数年にわたるラブコールの末にマンチェスター・ユナイテッドへ加入した若き天才。創造性あふれるドリブルとチャンスメイク能力で、攻撃陣を活性化させるキーマンとして大きな期待が寄せられました。イングランドのファンは、代表でも活躍する彼の凱旋を心待ちにしていました。
しかし、プレミアリーグのフィジカルとスピードに適応できず、ドルトムント時代の輝きは完全に失われました。自信を喪失し、監督との対立も表面化するなど、ピッチ内外で問題を抱え、最終的には古巣ドルトムントへレンタル移籍する形で一時的にクラブを離れることに。ユナイテッドの補強戦略の失敗を象徴する一人となってしまいました。
DFとして史上最高額の移籍金でレスター・シティから加入し、すぐにキャプテンに任命されたイングランド代表センターバック。そのリーダーシップと空中戦の強さで、不安定だった最終ラインを統率することが期待されました。加入当初は守備の柱として奮闘し、チームの上位進出に貢献する場面も見られました。
しかし、足元の技術やスピードの不足が露呈し始めると、致命的なミスが散見されるようになります。SNSやメディアから厳しい批判を浴び、自信を失ったプレーが続く悪循環に陥りました。最終的にはキャプテンの座を剥奪され、スタメンの座も失うなど、彼のユナイテッドでのキャリアは困難なものとなっています。
アヤックス時代にテン・ハフ監督の下でブレイクし、その恩師と共にオールド・トラッフォードへやって来たブラジル人ウィンガー。独特のリズムを持つドリブルと左足から放たれる正確なシュートを武器に、停滞気味だった右サイドの新たな希望として迎えられました。加入直後には3試合連続ゴールを決めるなど、鮮烈なデビューを飾り、その期待は最高潮に達しました。
しかし、その後の活躍は限定的なものとなっています。左足に依存した単調なプレースタイルはプレミアリーグの屈強なDFたちに研究され、高額な移籍金に見合うだけのゴールやアシストを記録できていないのが現状です。若さゆえの伸びしろに期待する声もありますが、現状では「高すぎる買い物」という厳しい評価を覆すには至っていません。
マンチェスター・ユナイテッドのアカデミーが育てた才能が、当時の史上最高額で「帰還」したことで世界中の注目を集めたポール・ポグバ。ユベントスで世界最高のMFの一人へと成長した彼に、クラブとファンは中盤の支配者となることを期待しました。類稀なフィジカルとテクニックを兼ね備え、彼にしか描けない華麗なパスや強烈なミドルシュートで、数々のビッグゲームを彩ったのは事実です。
しかし、そのプレーはあまりにも不安定で、好不調の波が激しいことが常に批判の的となりました。守備への貢献度の低さや、ピッチ外での言動もしばしば問題視され、1億1000万ユーロという移籍金に見合う絶対的な存在にはなれないまま、契約満了で再びフリーでクラブを去りました。彼のユナイテッドでのキャリアは、才能と期待、そして失望が入り混じった、非常に複雑なものとして語り継がれるでしょう。